木之下惠美ノート

(社)アロマハンドトリートメント協会理事長 らぼぞうスクール校長 ドイツメデイカルハーブと占星術

プリニウスとエルダーと命について

…冬の鷲座が昇る頃に受胎する木のなかでは、 

とりわけアーモンドが真っ先に一月に開花して、三月には実が熟す。

それにつづいてすぐにアンズが開花し、

トゥベル(アザロール)と早生種がそれにつづく。

前者が外国から来たもので、

後者は促成栽培されたものである。

一方、自然のとおりの順序でいって最初に開花するのは、

野生種のなかでは、

木髄が非常にたくさん詰まっているニワトコと…。  

 

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これは、

古代ローマプリニウス(Gaius Plinius Secundus)の著書Naturalis Historia『博物誌』中で、

エルダーなどの薬樹についての記述の一部です。

 

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鷲座が昇る頃に受胎する木 

なんて素敵な始まり!

またこうもあります。

 

…どんな木にも豊富な脂肪層や肉があるわけではない。

非常に敏捷(びんしょう)な動物にはこういうものがないのと同じことである。

ツゲやミズキ、オリーブには脂肪層も肉もなく、

髄もないうえに血液さえも非常に少ししかない。

同時にナナカマドには骨がなく、

ニワトコには肉がない。

ただし、どちらの木にも髄は非常にたくさんある。

またアシも、その大部分には肉がない。…

 

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樹の血液、樹の脂肪層、樹の骨、樹の筋肉、

4Kや8Kのごとき自然の描写!

大博物誌家プリニウスの記述ですよ!

 

つくづく、

現代を生きる私たちの想像力容量の

小さいこと!と思ってしまいます。

 

今から2千年前のこの時代の人は、

どういう目と創造力を

もっていたのでしょう。

ましてやそれよりも前の人々は

どうだったのか…

 

古い時代の自然と人との関係を学び、

検証することは、

私の仕事においてとても大切です。

そういう事ごとに目を向けていると、

人間社会には、

相いれないもののなんと多いことか、

と気持ちが閉塞します。

様々な国のダークサイド、

様々な人の主張、

ゲノム編集食品の賛否、

温暖化についても、

なんで右か左、上か下、

スクラップ・アンド・ビルドしか

ないんだろうか?

 

どうして、こうなっていくのだろう…。

その真実は、本物の真実だろうか…。

 

命について現代の目線で考えると、

ゲノム遺伝子用語にとって変わります。

ゲノムの本体はDNAです。

ヒトのゲノムは、

その遺伝情報の全量を意味しています。

 

成人の細胞は、

約60兆個と言われていますが、

ゲノムの遺伝子は

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学

ティーブン・サルツバーグ教授らにより、

2018年時点で2万1306個であると

発表されました。

 

それより以前は、

もっとずっと多い10万個くらい

なんじゃないかと言われていたのですが、

想像よりずっと少ないことが

わかってきたのです。

ショウジョウバエのゲノム遺伝子は

1万3000個なので、

私たち人間の遺伝子は、

ハエの2倍以下だということに、

世界中が驚きました。

 

科学者や知識者が思うより

少なかったゲノム遺伝子。

 

ヒトが食する他の命の

ゲノム情報を編集する食品の

賛否は横において、

ゲノムという生命の暗号の解析は、

より一層進んでいくことと思います。

 

もちろんヒトゲノム自体も

命のかたちをオーダーメイドしたり、

命の時限装置を操作したりが、

社会的な地位を築く時代は

もうそこまでやってきています。

 

大博物誌家、プリニウスに戻りますが、

 

鷲座が昇る頃に受胎する木、

樹の血液、樹の脂肪層、樹の骨、樹の筋肉、

4Kや8Kのごとき自然の描写!

 

少なくとも、

最先端ゲノムとは違う次元で起こっている

このプリニウスの語る命の、

儚くも力強い何かをリアルに感じる力は、

今の私たちに、

少しずつ薄れている気がします。

 

 

明日もまた、

命があるとは限らない。。。

 

そんな当たり前なことを、

飼い猫(我が家では家族の柱?のような子)のあめよさんに教えてもらった秋でした。

17年ありがとう。あめよさん。

 

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木之下惠美